運動療育について考える

療育について調べていると、「当事業所は運動療育を実施しています!」などの文言を耳にすると思います。

では「運動療育」とはどのようなことを実施するのでしょうか。

「療育」とは、1948年に高木憲次氏が発表した造語で、「医療」と「教育」を合わせたものとされています。

身体障害のあるこどもへの支援の中で生まれた概念ですが、現在は「発達支援」ともいわれています。

以下、厚生労働省による定義となります。

発達支援とは

障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活および社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的および医療的な援助である。

〈厚生労働省「児童発達支援ガイドライン」より〉

運動療育とは何か

運動療育とは、上記の療育に対して「運動」を組み合わせたことばになります。

運動の定義を調べてみると、「健康や体力を維持・増進するために、あるいは趣味や遊びとして、身体を動かすこと」とされています(広辞苑より)。

このことから、運動療育とは、運動を通して、療育「カスタマイズされたプログラム」を行っていく手法といえます。

つまり、運動療育とは、「個別化されたオーダーメイドの運動である」といった視点が必要になります。

「評価(根拠)に基づく」「運動」によって、効果の高い支援が生まれる、ということですね!

療育に運動が必要な3つのポイント

①運動機能の側面が発達障害において重要な課題

発達障害は、コミュニケーションや社会性の障害と認識されることが多いのですが、ヒトの運動はすべて、コミュニケーションの手段であり、社会的活動の一部と捉えることができます。

さらに発達の初期段階として、身体運動(からだ)と認知機能(こころ)、コミュニケーション能力(ことば)を分けて考えることはできません。

発達障害児の身体運動の苦手さ、不安定さなどが指摘されていることからも運動面の視点を持つことは重要です。

②感覚統合の視点からみる療育について

「感覚統合」とは、アメリカの作業療法士であるエアーズ(1920-1988)が考案し、「視覚、聴覚、触覚などの様々な種類の感覚を、脳内で適切に処理し、適切な行動を選択する」一連のプロセスです。

たとえば、「キャッチボールを行う」という行為も、視覚でボールの位置や速度を把握し、固有感覚で自分の腕や手など体の位置関係を調整し、触覚でボールを触る必要があります。

発達障害児は、視覚や聴覚に困難さを認めることが多く、感覚統合の不十分さが行動の困りごとに繋がっているケースがあり、このような場合は、運動・学習・社会性・情緒面の発達を促すため、感覚統合の視点で、発達の土台づくりを行うことが重要です。

③近年の社会環境や生活様式の変化について

近年の社会環境や生活様式の変化などにより、運動の機会の減少や生活習慣の乱れが生じてきており、こどもの体力・運動能力は長期的に低下傾向にあります(文部科学省より)

これらは、心の発達の遅れや社会適応能力の低下、免疫力の低下に影響するといわれており、社会全体が取り組むべき課題となっています。

以上のことから、療育を実践していく上で、人の巧緻動作、コミュニケーション、社会性の発達のためには、身体の安定(運動面のアプローチ)を先行して考えていく必要がある、と考えられます。

終わりに

今回の記事では、「運動療育について考える」とのテーマで記載いたしました。

こどもの「困りごと」だけに目を向けるのではなく、原因を追究し、発達段階や特性に合わせた支援を行っていきたいですね。

当事業所では、児童発達支援に加えて、土曜日の午前中に体操教室(自費サービス)も運営しており、「発達の土台を育てる」という視点を持ってプログラムを提供しております。

詳細につきましてはこちらをご覧くださいませ。

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