発達性協調運動障害と早期療育

発達性協調運動障害をご存じでしょうか。

発達障害児はコミュニケーションや社会性の障害と認識されることが多いですが、身体運動の苦手さ、不安定さなどが指摘されています。その要因の一つに「発達性協調運動障害」があります。

今回は、発達性協調運動障害についてまとめていきたいと思います。

まずは発達障害について

一般的に認識されるようになったきっかけは、1980年代以降、学齢期になり学習についていけない、落ち着いて席に座っていることができないといった児童がマスコミで頻繁に取り上げられて話題になりました。

2005年4月1日より、「発達障害支援法」が施行され、「発達障害」が広く一般のひとに認知されるようになりました。

知られるようになったのは、比較的最近のことなのですね。

発達障害の定義

・WHOの国際疾病分類(ICD₋10)における「心理的発達の障害」

・米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM₋5)における「神経発達症」

[代表的な発達障害と特徴]

自閉症スペクトラム障害(ASD)

社会性、②コミュニケーション、③イマジネーションの3領域における障害と定義されています。

・イマジネーション障害とは、パターン化された考え方や行動だけでなく、予定変更が苦手、物事を大雑把に捉えることができないこと

これらは、ミラーニューロンシステムに機能障害があると考えられています。たとえば、母親の「バイバイ」に対して、自らの手のひらを逆に向けて「バイバイ」する動作が特徴的など、相手の意図を推定する段階の困難さを認めます。

注意欠如多動性障害(ADHD)

注意の障害と多動性、衝動性の障害の両者、あるいはどちらかを示す障害

幼少期によくみられる症状ですが、①明らかに許容範囲を逸脱している、②ある程度の期間(6ヶ月以上)持続し観察される、③複数の場面でその行動(逸脱した行動)が出現する、④その行動のために本人や周囲に不利益が生じている、などを認め、7歳までに発症することが基準となります。

限局性学習障害(SLD)

・日常生活には問題なく友人とのコミュニケーションも良好である一方、特定の教科がついていけないことが特徴

読字障害、書字表出障害、算数障害などを認めます。

発達性協調運動障害とは

ICD-10




心理的発達の障害
会話および言語の特異的発達障害
広汎性発達障害
学力の特異的発達障害(LD)
運動機能の特異的発達障害
混合性特異的発達障害
他の心理的発達障害


小児期・青年期に通常発症する行動及び情緒の障害
他動性障害
チック障害
行為障害、情緒障害、社会的機能の障害、など
DSM-5






神経発達障害
知的障害
コミュニケーション障害
自閉スペクトラム障害(ASD)
特異的学習障害(LD)
運動障害
注意欠如多動性障害(ADHD)
チック障害
他の精神発達障害

ICD-10「運動機能の特異的障害」、DSM-5「運動障害」のことを発達性協調運動障害といいます。

[DCDとその他の発達障害の重なり]

DCDは発達障害と併存しているケースが多いが、DCD単独で現れることもある。

発達性協調運動障害(DCD)とは

基本的に、神経系や筋肉に解剖的(器質的、物理的)な問題がないにもかかわらず、「ボールを蹴る」「字を書く」などの協調運動に困難を呈する障害(神経発達障害の一類型)

学童期には「運動が苦手な子」「運動神経が悪い子」として見られ、学校生活・日常生活に影響を及ぼしやすい。

症状は、よく転ぶ、バランスやリズムが悪い、手指の巧緻動作が書字が困難、ボールを蹴ると空振りする、靴紐が結べない、縄跳びができない、自転車に乗れないなど。

同世代の子どもとの遊びについていけないといった社会的な困難が生じやすい。

どの程度の割合で発症する??

・欧米の調査では、学齢期の小児の有病率はおよそ5~6%(男児に多い)とされており、30人クラスに1~2人いることになります。

・DCDは、青年期・成人期にも運動の不器用さが残存するといわれています。

・ASDの約40%、ADHD30~50%にDCDが併存するとのデータもあり、ASD・ADHDなどの発達障害には「運動障害があるかもしれない」といった視点で観察する必要があります。

なぜ運動の不器用さが生じるのか

神経発達症であり、運動学習を担う脳のシステムの先天的、または発達的な問題

運動学習の困難さミラーニューロンシステム障害などが挙げられています。

運動学習の一連の流れ

①発達や学習の初期段階

失敗から学ぶ→スキル習得

逆上がりの習得までを例にすると…

鉄棒をもって足を振り上げよう。

 「足の振り上げが不十分で出来なかった」

 =予測と結果の誤差が生まれる

次はもう少し肘を曲げてみよう。足の振り上げを強くしてみよう。

運動を修正(同時に失敗した運動指令を抑制)

一度できるようになった運動スキルは、なんどでも出来るようになる(予測的運動制御機構といいます)

逆上がりも出来るようになるまでは大変ですが、一度習得すれば体が学習してくれますよね。

②学習の第2形態

成功体験→中脳ドーパミン放出(幸せホルモン)による強化学習

うまくできた!

内的報酬:もう一回やりたい!

外的報酬:ご褒美を買ってもらえる!

③学習の最終形態

 「失敗から学ぶ学習」と「成功体験に基づく強化学習」の組み合わせ戦略

発達性協調運動障害は、「発達や学習の初期段階」の困難さがあることから、運動の不器用さが出現すると言われています。

学校体育などの集団活動の場所では、運動が不器用な子は褒められる機会が少なくなり、学習意欲が低下してしまいます。

早期リハ・早期療育が大切

発達性協調運動障害は、まだ保育現場や教育現場で十分に認識されておらず、運動の不器用さから自己肯定感の低下につながってしまうことも少なくありません。乳幼児期は、感覚や認知を育む経過を楽しむことが発達にとっては重要であり、早期の支援が必要になります。

運動を頑張らせると逆効果になる可能性も。。
叱る、焦らす行為はNG。

運動療育の3つのポイント

①発達や学習の初期段階を丁寧に支援!

・こども自身が困っていること、保護者の方や学校の先生が困っていることを具体的に示し、目標の優先順位を決定する(本人が本当に取り組みたい活動に焦点を絞る)=具体的な目標であること

運動イメージ(予測)をわかりやすく伝える

運動順序のイメージ化=見本の動画をコマ送り写真にして正しく並べかえていく練習など

②モチベーションを保ちながら、意欲的に学習できるように!

とにかく楽しく(モチベーションアップ!)

・スモールステップで目標につなぎ、出来たときにはすかさず褒める!(ドーパミン=幸せホルモン放出)

③一貫性のある支援

・療育現場だけではなく、家庭や保育所においても一貫性のある支援を行う。特に環境設定は重要で、必要に応じて補助具などの使用(例えば、書字が苦手な子には鉛筆グリップを使用するなど)も検討する。

→療育現場のみでは十分な効果が得られない!

おわりに

発達性協調運動障害は、ただの不器用さとして見過ごされるケースが多くありますが、早期の介入が必要であることがわかります。

また、診断はつかなくても運動課題をかかえたお子さまは多くいらっしゃいます。

上記のことから単に運動させるのではなく、正しく評価し、適切な支援を行うことで、発達の土台づくりを行っていくことが大切です。

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